フォルムの大変美しい花瓶です。地肌はもちろん穴窯焼成の自然釉です。玄関でこのような花瓶に生けられた花に出迎えられたら、きっと毎日が生き生きとしてくるのではないでしょうか。この写真を撮影したのは6月ですので、アジサイが美しく生けられています。
こちらは、黒しその茶入れです。この茶いれ、黒しそであるだけでも、上記のとおり大変貴重なのですが、茶蓋が象牙で出来ており、その象牙に、みてわかるように、黒い一筋の線が走っているところが、また貴重さをさらに増しています。黒い筋は、虫食いのあとであり、そのような跡が蓋にあらわれるようにしてうまく成型した蓋です。黒しその味わいは、上の花器にまさるともおとらないものとなっており、見るものに大変大きな満足感を与えてくれます。
耳付きの花器です。焼が大変味わい深いものになっていることはさることながら、形もまた独特で、大変見ごたえのある作品に仕上がっています。こちらの作品は、黒じそと呼ばれる大変珍しい仕上げになった作品で、備前の土にもかかわらず、黒く変色しています。これは、大量の水が、穴窯内に吹き出し、その水の影響を受けて土が黒く変色したものと考えられています。このようなことは、大変珍しく、現在このような作品が作れる窯を有している陶芸家は皆無に等しいと考えられます。例えそのような窯であっても、ごくまれにしか、このように黒く変色するほどの水が吹き出すことはなく、その意味で二重に貴重な作品だといえるでしょう。
梅野氏の作品は、備前の赤茶色の土が自然釉により黄土色になり独特の味わいを見せます。左側の作品では作品の向かって左側に火元があったと思われ、自然釉が大量にかかっている様子がうかがえます。右側の作品では、釉がしたたりおちるように下へと線を引いているのがわかります。両作品共に備前焼においては余人の成し得ない仕上がりになっているといえるでしょう。独特の味わいを持つ作品を制作する方はたくさんいらっしゃいますが、このように穴窯によって大変手間のかかる作品を作っている陶芸家はほとんどいないといえるでしょう。

はじめに

梅野陶香氏は、昭和24年生まれで、来岡金重利陶苑で修業しています。岡山県の長船町に半地上穴窯を作って作陶活動をしています。東京、大阪をはじめ各地で個展を開いています。

備前焼は須恵器を先祖として発達した歴史を持ち、千数百度の高温で焼き締められた土は、自然の力によって複雑な味わいを見せてくれます。還元焼成と呼ばれる酸素をほとんど送らない焼成法により焼いた作品は、須恵器に見られる肌や、桃山時代の備前焼の味わいを私たちに示してくれます。
subetesuki0's Website!

subetesuki0's MUSEUM
梅野陶香美術館