5 水指です。自然釉がかかっている部分、灰色になっている部分が火前です。それほどたくさんかかってないので、たしょうひからはなれていたものと思われます。自然釉のたれ具合がいい味をかもし出しています。
4 壷です。これは、他の稲葉氏の作品と違う点があります。常滑の土を多く使用しているのです。常滑の土はガラス質が多いためとけやすく、このようにビードロ状の肌が全面に出ます。
2005.6加満久良にて
3 水指です。自然釉が大量にかかった器面が見事です。灰との接触により自然釉がかかった部分がさらに黄色く変質しています。
2005.6加満久良にて
2 これは、傘入れにしても面白いかもしれません。大変贅沢な傘入れになりますね。
穴窯で製作した作品は確かに見慣れないとその素晴らしさが見えてこないかもしれません。しかし、似たような肌の別の窯物を見ていれば、必ずその違いに気が付くでしょう。穴窯のほうが圧倒的に深いのです。好き嫌いはあっても、穴窯で焼かれた作品の深さは誰しもが認めるものでしょう。
1 稲葉氏の常滑焼は常滑の土以外に様々な産地の土をブレンドしているため、普通は常滑焼とはわかりません。この壷は土がどろどろに解けてビードロ状になっている様子がよくわかります。穴窯によるこのような壷が存在すること自体すごいことです。日本中どこを探してもこのようなタイプの作品はほとんどお目にかかれないでしょう。それは、美術館に行っても同じことです。そういう意味で、このような作品を制作し続ける稲葉氏は現代に甦った鎌倉室町時代の陶工だといえるのではないでしょうか。
常滑の  輝くばかりの 深い肌
こちらのページに載っている写真は鎌倉の陶器処「加満久良」の協力の下に撮っています。
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現代陶芸家美術館
愛され、使ってもらえる器作りを目指す稲葉氏は1941年常滑の生まれです。1977年に産地振興長三賞デザイン部門金賞を受賞し、その後も賞を重ね、1992年には常滑市黒山に穴窯と呼ばれる古来の窯を開きます。その後様々な場所で個展を重ね、1999年には三基目の穴窯を完成させます。
陶号を石水といいます。
穴窯の説明を少ししましょう。穴窯は丘陵地域に掘る土の窯で、薪をくべながら、十昼夜以上焼き続けます。この窯によって焼かれた作品は、土がどろどろにとけ、土に含まれるガラス質がビードロ状になって光ります。釉薬も掛けないのに釉薬を掛けたような肌となり、これを自然釉と呼びます。このようなスタイルで作品を制作する現代陶芸家はほとんどおらず、まさに稀有の一言に尽きます。
稲葉米紀美術館